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kada-lab

コラム

加太の美味しいひじきの話

おむすびスタンド『くど』

 先日、南海高野線九度山駅に昨年末できたおにぎりスタンド「くど」を訪れました。とてもチャーミングな木造駅舎のホームにあるこれまた素敵なおにぎりスタンドで、豊富なメニューの中に「加太ひじきむすび」がありました。普段加太で食べているひじきですが、緑いっぱいの山あいの町でいただく加太の海の幸のおむすびもまた美味しいものでした。

どこかノスタルジックな店内

 鯛をはじめとした鮮魚やタコで有名な加太湾ですが、実はひじきやワカメ、テングサなどの海藻類は密かに地域で推している産品でもあります。私も海藻の「地味で素朴な味」というイメージを完全に覆す、ぷりぷりの舌触りで新しい美味しさに感激したものです。この質の高い海藻が採れるのは、加太の漁師さんが昔から一本釣りや刺し網など、小規模漁業をルール化し藻場を大事にしてきたおかげで育ってきたものです。

『くど』の加太ひじきむすび

 これらの海藻類は実は販売までに多くのプロセスを得てようやく食卓に並びます。そのうち、特にひじきは、まだ肌寒い春先頃の新芽の刈り取りに始まり、5月くらいまでが時期となります。深いところでは、漁師さんたちもウェットスーツを着て2mほど潜って刈り取りを行い、漁船いっぱいに乗せて岸に戻ります。

船いっぱいにのったひじき

この時のひじきは長いもので全長1.5〜2メートルほどの長い植物のような状態で、これらを短く切って大きな鉄の釜でどさっと茹でる、いわゆる「釜あげ」にします。火力を微調整しながら、2時間かけてじっくりと茹で、茹で上がったひじきを、さらに細かく切って袋詰めしたものが「釜あげひじき」、さらに天日干ししたものが「天日干しひじき」です。ちなみに、生ひじきを素干ししてストックしておき、水で戻して釜で炊くこともあります。

ひじき刈りの様子

このように鉄分やミネラルが豊富な一方で、一見シンプルな食材にも感じられるひじきは、皆さんの食卓に並ぶまでに漁師さんたちの膨大な手間と時間がかかっていることがわかります。 ちなみに、加太の漁師さんの釜あげひじきのお勧めの食べ方は、そのままポン酢とごま油で混ぜて食べる簡単な方法で、ツナを混ぜてサラダにしても良いとのことです。私も加太にきてからはこの方法で美味しいひじきを食べるようになりました。皆さんも加太のひじきは是非この方法でいただいて海藻の味を確かめてみてください。

天日干しされたひじき

この記事は2020年7月28日 わかやま新報「加太地域ラボ通信」に掲載されたものを一部編集したものです。