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コラム

地方の未来を科学の視点で考える―サイエンスアゴラ2020

 2020年11月15日から11月22日にかけて国立研究開発法人 科学技術振興機構が主催する「サイエンスアゴラ2020」が開催されています。今回はオンライン開催で、テーマは「Life」。地域ラボからも16日に「ライブ中継!最新技術で漁師町の未来をどう変える?」として、東京大学生産技術研究所(東京)と地域ラボ(加太)の二拠点からライブ配信を行いました。

加太からは青木助教と私、そして加太で暮らす一本釣り漁師さんと板前さんが登壇し、加太の暮らしを動画で紹介し、さらに、クイズをとおして加太の漁法や、海を守る取り組みについて紹介しました。そして生産技術研究所からは、加太の現状を参考にした一つのピンチ(課題)を出題し、そのピンチを乗り切るためにカードに書かれた最先端技術を使用して様々なアイデアを出しあう、という「生研道具箱カードゲーム」を行いました。カードに書かれた最先端技術は“自律型海中ロボット”や“生体の高品位保存”といったものであり、視聴者にはその技術を自由に使って、「加太の魚がとれなくなってきた」というピンチに挑んでいただきました。

「生体の高品位保存で魚の卵だけを残し、身だけ食べて卵を海に返す」「分子センサーで海の汚れをモニタリングする」など、科学の視点からおもしろい提案をしていただきました。カードゲームをとおして加太というまちのことを知ってもらえたこと、そして実際に直面している課題について視聴者が真剣に考えてくれたことが何よりの収穫であったように思います。

ライブ配信の様子(地域ラボにて )

海上の埋め立て地にある関西国際空港の土砂の多くは、加太の山から削られたものです。山から土を削った際、海に流れ込む森からの栄養分が減り、加太の海での漁獲量が減ったそうです。このことから、海を守るためには森も守らなければならない、ということを加太に住む人たちは身をもって感じています。加太では、昔から続く漁法を継承し、森林整備をし、漁礁を入れ、今ある豊かな漁場を守りながら次世代につなぐ努力をし続けています。

サイエンスアゴラは、加太という小さなまちで、自分たちの生活を持続可能なものにするために活動している人がいることを知っていただくきっかけとなりました。  地方が抱える過疎化や少子高齢化などの問題は、全国的に人口減少が進んでいる現在においては、今後都市部も抱える問題となります。

つまり地方の“今”を考えることは、都市部の“未来”を考えることにつながります。この配信から地方の実情を知ることで、他人事ではなく、自分事として踏み出していただければと思います。加太の「Life=暮らし」を少しでも感じ、自分の住む地域に置き換えて、自分には何ができるかを考えた時点で自分事への第一歩を踏み出しています。

SIENCE AGORA サイエンスアゴラ2020HP

https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/2020/index.html

企画タイトル:ライブ中継!最新技術で漁師町の未来をどう変える?

https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/2020/planning/planning_1604.html

https://www.youtube.com/watch?v=TWZcr5AtyiA&feature=youtu.be

この記事は2020年11月28日 わかやま新報「加太地域ラボ通信」に掲載されたものを一部編集したものです。