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kada-lab
地域外の人材が担うまちづくり
近年、地方創生に関する施策が各自治体で打ち出されています。東京一極集中を解消し、地方の人口減少に歯止めをかけるため、都市部から地方への移住・定住を促す施策もこの一つです。日本の人口は2008年の約1億2,808万人をピークに減少を続けています。東京都などの大都市では現在でも人口流入がありますが、地方都市では特に若者の人口流出が激しく、人口減少・高齢化などによる地方の担い手不足が問題となっています。
その中で注目されているのが「関係人口」です。関係人口とは、総務省HPによると、「移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します」と説明されています。従来のまちづくりは地域に住む人が行うもの、という考え方でした。しかし関係人口は、地域外の人に注目したものであり、まちに住まない地域外の人にもまちづくりの担い手になってもらおうとするものです。
関係人口の例としては、進学や就職を機に地元を離れたけれど地元にも貢献する、ワーケーションで仕事をしながら会社の技術を通じて地域に貢献する、といったことがあります。全く関係のない地域のまちづくりに関わっていくのは少し難易度が高いですが、自分が生まれ育った地域や、仕事のため一定期間滞在する地域などは、そのまちのことを少しでも知っているため、地域の中に入り込みやすいかもしれません。関係人口と聞くと難しそうに聞こえますが、要はその地域のファンの人数が関係人口だと思います。魅力のある地域に対して何か貢献しようと考える人も少なくないはずです。地域のファンを増やしていくことが、関係人口を増やすことに繋がります。
日本は少子高齢化の時代となり、どの自治体においても人口減少が課題となっています。都市部から移住し、定住する人もいますが、多くの自治体では人口が増えたと感じられるほどの移住者がいるわけではありません。担い手が不足している地域がまちを維持していくためには、地域外に暮らす人々をまちづくりに巻き込むことが重要です。これらの人々が関係人口であり、地域内に暮らす人も地域外に暮らす人も、協力してまちづくりに参加することが必要な時代なのかもしれません。また地域側も、移住はできないけれど、自分が好きなまちで(観光のような一過性のものではなく)まちづくりに参加したい、という人を受け入れる態勢が必要になってきます。
関係人口として地域に関わる人にとって、定住先が地域外であっても、まちをよくしたいという想いは地域内に住む人と同じだと思います。関係人口になるということは、自分の生まれ育った故郷以外の、第二第三の故郷ができるということではないでしょうか。
この記事は2020年10月17日 わかやま新報「加太地域ラボ通信」に掲載されたものを一部編集したものです。