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kada-lab

コラム

多様な働き方の可能性

 「仕事」と聞くと、会社のある場所に出勤し、社員が同じ場所で働くというイメージがあるのではないでしょうか。数年前から政府の政策として、ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方を行おうという「働き方改革」が提唱されています。この中の施策の一つで、企業に従業員の多様な働き方を認める環境づくりを進めています。その手段として、ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を選ばず業務を行うことのできる「テレワーク」を推進しています。

しかし会社に通勤して仕事をするというイメージが強く、テレワークの普及率は低いものでした。コミュニケーション不足への懸念や、従業員の管理監督への不安などから日本でのテレワークの普及が進まなかったようです。しかし、新型コロナウイルスの影響により、人との接触を極力避けましょうという緊急事態宣言下で、半ば強制的に企業はテレワークを余儀なくされ、日本国民全員による働き方改革が行われました。

人と対面で仕事をしなければならないようなエッセンシャルワークと呼ばれる職業(医療従事者、警察官など)以外では、意外とテレワークでも仕事ができたと考える企業も少なくなかったことと思います。これを契機にテレワークを活用した新しい働き方が模索されつつあります。

場所を選ばない働き方(ワーケーションイメージ)

 このテレワークを活用した働き方の考え方の一つとして「ワーケーション」があります。ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を掛け合わせた造語です。リゾート地など普段の職場と違う場所で、その地域の魅力に触れながら仕事をするという新しい働き方です。和歌山県でもこの働き方を導入しようとする企業の受入体制を整えており、白浜町や田辺市などで行うワーケーションの実施を支援しています。

そして、ワーケーションを通じて地域とも繋がり、地域課題の解決や新たなビジネス創出のツールとなることを期待しています。一方で、企業側ではセキュリティ対策の問題や、労務管理の問題など、導入するには様々な部分で検討しなければならないこともあり、課題もあるのではないかと思います。

 自分の好きな場所で自分の好きな時間に働くことができるというのは、日本の労働人口を増やす一助になると思います。一定の時間に会社に赴かないといけないというルールがある以上、場所や時間に制約がある人を労働力から外すことになってしまいます。そんな人たちに働く場を提供でき、労働者自身の人生の選択肢が増えたという意味でも、テレワークやワーケーションというのは期待できる働き方の一つといえると思います。これまでは、仕事は場所や時間に縛られるものという考え方が一般的でしたが、ICTの普及により、場所や時間にこだわらない働き方が可能になります。働くことの多様化に対して寛容な社会、多様な生き方を選択できる社会が、これからの未来に望まれています。

この記事は2020年9月19日 わかやま新報「加太地域ラボ通信」に掲載されたものを一部編集したものです。