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コラム

マイクロツーリズム―まちの魅力の再発見

 新型コロナウイルスの感染拡大により、密閉・密集・密接の3密を避け、不要不急の外出を自粛するような世の中になって半年ほどが経過しようとしています。このウイルスによって、私たちが当たり前に行っていた生活や行動は公私ともに考えさせられることになりました。

 特に長距離移動を伴う旅行には、行きたくても行くのをためらう人が増えたことと思います。そんな中、「マイクロツーリズム」という近距離旅行の考え方を星野リゾート代表の星野佳路氏が提唱しました。これは、自宅から30分~1時間程度の距離で旅行をし、地域の魅力を再発見しようというものです。ウイルス拡散のリスクを減らしながら地域内で観光を行うことで、地域経済に貢献できる、地元の知らなかった魅力を再発見できるなどの効果が考えられています。

加太のまち歩きMAP

 旅をするとき、目的地に何を求めて旅をするでしょうか?知らない土地を旅することで、日常から離れた非日常を味わったり、その土地の空気を五感で感じることで新たな知見を得ることもあるかもしれません。このように今までの旅行の概念で遠出しようとすると、感染拡大への懸念から旅行への気持ちが遠のいてしまう人も少なくないでしょう。しかし遠方のまちに行くのではなく、近場の地元を旅することで、地域経済を盛り上げつつ、知らなかったまちの魅力を再発見しようというのがマイクロツーリズムです。

 私たちが旅行をするとき、知らない土地に魅力を感じていることが多いかもしれません。しかしコロナ禍の今を契機に、自分が住むまちの知らなかった魅力を知るために近場の旅行をしてみるのもよいのではないでしょうか。例えば日帰りで行けるところに敢えて宿泊することで、そのまちの朝昼夜それぞれの違った顔を見ることができます。まちの様々な風景に触れ、その地域に住む人たちの生活に触れることで、新たなまちの顔を知ることができるのです。

夏の風物詩 加太の平久荘のかき氷

 自分が住んでいるまちは日常であり自分に身近なものであるため、生活の場として見ることはあっても観光の場として見ることはあまりないかもしれません。同じまちの風景でも、そこに住む人と、住んでいない人とでは見え方が違ってきます。住んでいる人からすると日常の当たり前の風景も、観光で訪れる人にとっては非日常の風景であり、とても魅力的なものと感じることがあります。

 視点を変えることで、日常のまちの中に、実は自慢できる魅力が潜んでいることに気づくことができるかもしれません。そんなまちの魅力を再発見するための手段として、マイクロツーリズムはとても有効だと思います。遠いまちの魅力に目を向けるより、身近なまちの魅力を探しに出かけてみませんか?

この記事は2020年8月22日 わかやま新報「加太地域ラボ通信」に掲載されたものを一部編集したものです。